【印刷可】訪問看護のハラスメント研修|カスハラ・セクハラから職員を守る対応と記録

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  1. 1. ハラスメントとは?訪問看護を取り巻く種類と概要
    1. 厚生労働省のマニュアルに基づく「ハラスメント」の基本定義
    2. 訪問看護で発生する2つのルート
  2. 2. 訪問看護の現場で「ハラスメント対策」はとても重要
    1. 「逃げ場のない空間」が潜むリスク
    2. 医療処置の妨げや、看護師の離職を防ぐために
    3. 法令上の義務:全ての事業所に求められる「適切な措置」の重要性
  3. 3. 【ルート別】現場で発生しやすいハラスメントの具体例
    1. 【利用者・家族】からのハラスメント
      1. 身体的・精神的暴力、過剰要求(カスハラ)
      2. セクシャルハラスメント
    2. 【職員同士】からのハラスメント
      1. 男性看護師も当事者に?職場内セクハラの盲点
      2. どこからがパワハラ?業務指導との境界線
  4. 4. ハラスメントに遭遇・発生したその瞬間の「初期対応」と記録術
    1. 感情的にならず「毅然とした態度」が重要
    2. あやふやにしない!身を守るための「客観的な書面記録」の重要性
    3. 職場でパワハラ・セクハラを受けたら?「ハラスメント相談窓口」の活用法
  5. 5. 組織(ステーション)全体でスタッフを守るための対策と連携
    1. 一人で抱え込ませない!速やかな「報告・相談ルート」の仕組み化
    2. 訪問体制の工夫:リスクが高い場合の「2人訪問」への切り替え
    3. 関係機関(ケアマネジャーや自治体)との外部連携フロー
  6. 6. トラブルを未然に防ぐ!日々のコミュニケーションと「内省」の視点
    1. 訪問看護サービスとしての適切な「距離感」を保ち、過度な依存を防ぐ
    2. 全てをハラスメントにしないために:自分の対応を「内省」する重要性
  7. 7. Q&A:訪問看護の現場で迷う「ハラスメント対応」のギモン
  8. 8. まとめ
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    2. アンケートの実施

1. ハラスメントとは?訪問看護を取り巻く種類と概要

厚生労働省のマニュアルに基づく「ハラスメント」の基本定義

📌 訪問看護の現場において、ハラスメントは決して看過できない問題です。

ハラスメントとは、相手の意図にかかわらず、

その言動によって相手が

  • 不快だ
  • 尊厳が傷つけられた

と感じる状況を指します。

🔻厚生労働省が定める主なハラスメントは以下の通りです。

パワーハラスメント優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で、就業環境を害すること。
セクシャルハラスメント性的な言動により、相手に不利益を与えたり、不快感を与えたりする行為。
カスタマーハラスメント(カスハラ)顧客や取引先からの理不尽な要求や、暴言・暴力などによる著しい迷惑行為。

訪問看護で発生する2つのルート

✅ 訪問看護の現場におけるハラスメントには、大きく分けて2つのルートが存在します。

訪問看護のハラスメントには、利用者・家族からの外部ハラスメントと、職員同士・上司からの内部ハラスメントの2つのルートがあることを示した図解
  • 【外部ハラスメント】(対 利用者・家族) 訪問看護の最大の特徴である「密室」で起こるハラスメントです。
  • 【内部ハラスメント】(対 職員同士・上司) 訪問看護ステーション内で発生するもの。

2. 訪問看護の現場で「ハラスメント対策」はとても重要

「逃げ場のない空間」が潜むリスク

訪問看護の現場は、病院や施設と異なり、利用者様の自宅という「完全な密室」となります。

  • 第三者の目が届かない 訪問時は看護師一人になることも多く、ハラスメントが発生しても周囲がすぐに気づくことができません。
  • 物理的な距離の近さ 処置や介助では、必然的に身体的距離が近くなります。これが、利セクハラの好機と誤解されてしまうケースも少なくありません。
現場のあるある

病院勤務時代は、ハラスメントを感じたらすぐにナースステーションへ戻り、同僚や上司に『今こんなことがあって……』と愚痴をこぼしたり、相談したりする場所がありました。しかし、訪問看護ではドアを閉めたらそこがすべて。誰の目もない密室で孤独に耐えなければならないという『相談先が見えない不安』が、スタッフの心理的負担を膨れ上がらせています。

医療処置の妨げや、看護師の離職を防ぐために

ハラスメントは単なる「不快な出来事」では済みません。

  • 安全への脅威 セクハラや暴言を受けた直後では、スタッフが冷静に医療処置を行えません。誤薬やケアのミスなど、医療事故に直結する危険性があります。
  • メンタルヘルス 「あの家に行くのが怖い」という恐怖心は、離職の最大の要因です。スタッフを守ることは、良質なケアを継続するための「経営戦略」でもあります。

法令上の義務:全ての事業所に求められる「適切な措置」の重要性

📌 令和4年度からは、全ての事業所で『パワーハラスメント防止措置』が義務化されています。

厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf

事業所の責任ハラスメントを放置することは、事業所としての「安全配慮義務」を怠ったと見なされる可能性があります。
研修の役割研修を通じて「何がハラスメントにあたるか」という共通認識をチーム全体で持つことが、被害を未然に防ぐ最大の盾になります。

3. 【ルート別】現場で発生しやすいハラスメントの具体例

【利用者・家族】からのハラスメント

訪問看護で利用者・家族から起こりやすい外部ハラスメントの例を示した図解。密室で起こりやすいセクハラ、暴言・暴力、過剰な要求を整理している。

身体的・精神的暴力、過剰要求(カスハラ)

🔻最も頻度が高く、スタッフの心を削るのがこのケースです。

身体的・精神的暴力訪問時に「早くしろ!」などと怒鳴る、服を掴まれる、ドアを閉められて部屋から出してもらえない、といった行為。
過剰要求(カスハラ)夜中や早朝の私的な電話、担当看護師への執拗な個人攻撃。「お金を払っているんだから言うことを聞け」などという言葉。

セクシャルハラスメント

看護師が一人で家に入る際、特に注意が必要です。

「誰にも見られていない」という環境が、理性を麻痺させることがあります。

  • 具体例:身体をじろじろ見る、体を触る、卑猥な言葉をかける、露出をするなど。女性スタッフを指名してセクハラを繰り返すといった悪質なケースも…。

【職員同士】からのハラスメント

訪問看護ステーション内で職員同士や上司から起こりやすい内部ハラスメントの例を示した図解。強すぎる指導、無視・仲間外れ、人格否定などを整理している。

男性看護師も当事者に?職場内セクハラの盲点

最近は男性看護師も増えています。

それゆえに「職場内のセクハラ」も複雑化しています。

  • 男性看護師へのセクハラ 女性スタッフからの「男のくせに力がない」「細いね」といった体型いじりや、悪気のないボディタッチ。

📌「女性へのセクハラ」ばかりが注目されがちですが、男性看護師もセクハラの被害者になり得るという認識を、チーム全体で持つ必要があります。

どこからがパワハラ?業務指導との境界線

職場環境を破壊しかねないのが、上司からのパワハラです。

「成長を願っての厳しい指導」と「パワハラ」の決定的な違いは、人格を否定しているかどうかです。

  • 具体例 「あなたは本当に使えない」「看護師辞めちまえ」といった暴言、他のスタッフの前で長時間叱責する、無視をする、正当な理由なく仕事を与えないといった行為。
現場のあるある

新人への指導:日々の業務の中で『もっとこうした方が効率的だよ』『次はこうしよう』と伝える際、相手にどう届くか言葉を選んでいます。しかし、一度感情的になってしまったり、相手の状況を汲み取らずに伝えてしまったりすれば、それはパワハラに繋がりかねないという緊張感を、常に忘れないようにしています。

4. ハラスメントに遭遇・発生したその瞬間の「初期対応」と記録術

感情的にならず「毅然とした態度」が重要

訪問看護でハラスメントを受けたときに、我慢したり笑ってごまかしたりせず、毅然と対応する重要性を示したイラスト

ハラスメントを受けたときに避けたいのは、

  • 我慢すること
  • 笑ってごまかすこと

その場ではトラブルを避けられたように見えても、相手に誤ったサインを与えてしまい、

次のハラスメントにつながることがあります。

  • 物理的な距離をとる 何かされたら、すぐに一歩下がる、あるいは処置を中断して立ち上がるなど、相手との物理的距離を確保します。
  • 拒否の言葉 「そのような言動は困ります」「それ以上続けられるなら、ケアを中断させていただきます」と、低いトーンで、かつ冷静に、明確な拒否の意思を伝えます。

あやふやにしない!身を守るための「客観的な書面記録」の重要性

ハラスメントが起きた際、記憶は時間とともに曖昧になります。

後に事業所として適切に判断を下すためにも、「事実をありのままに書面に残す」ことは、

自分自身を守るための最強の防衛策です。

記録の鉄則「5W1H」
  • When(いつ): 日時(分単位まで正確に)
  • Where(どこで): 訪問先の場所、あるいは事業所内のどの部屋か
  • Who(誰に): 加害者は誰か、目撃者はいたか
  • What(何を): 言われた言葉、された行為を正確に記録
  • Why(なぜ): 何をしている時に起きたか(例:清拭中、バイタル測定中など)
  • How(どのように): その後、自分がどう対応したか

注意点: 「ひどいことを言われた」という主観的な感情だけでなく、『この〇〇!』と利用者Aさんから罵声を3回浴びせられた といった客観的な事実を書くことが、後の相談や外部機関への報告において決定的な証拠となります。

職場でパワハラ・セクハラを受けたら?「ハラスメント相談窓口」の活用法

職場内でのパワハラやセクハラは、放置すると組織が腐敗します。

  • 窓口の利用 事業所には必ず相談窓口が設置されています。「相談したら報復されるかも」と悩む必要はありません。窓口の担当者は、公平な立場から事実関係を確認し、あなたの安全を確保する義務があります。
  • 相談時の心構え 前述した「事実記録」を書き上げたものを持参しましょう。書面があることで、会社側も具体的な対策を打たざるを得なくなります。

✅相談窓口の責任者自身が当事者である場合は、法人内の本部・人事・代表者へ相談します。法人内で安全に相談できない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、外部機関への相談も検討します。

➤【厚生労働省】総合労働相談コーナーのご案内|各都道府県労働局一覧が見れます。https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

📌 一人で抱え込まず、窓口という「組織の仕組み」を使うことが、自分自身と今後のスタッフを守ることに繋がります。

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5. 組織(ステーション)全体でスタッフを守るための対策と連携

一人で抱え込ませない!速やかな「報告・相談ルート」の仕組み化

訪問看護の現場では、帰宅後の「報告」が重要。

  • 小さな違和感の共有 「あの利用者様、最近少し言葉遣いが荒いかも」といった小さな違和感を、カンファレンスや報告書で気軽に口に出せる空気づくりが、大きなハラスメントを防ぐ第一歩です。
  • 緊急時の連絡網 「今、まさに困っている」という時に、誰に電話をすればいいのか。管理者、あるいはリーダーが即座に対応できるホットラインの確保が必須です。これによりスタッフに安心感を与え、組織としての最大の抑止力になります。

訪問体制の工夫:リスクが高い場合の「2人訪問」への切り替え

ハラスメントリスクが高いと判断された場合、組織として訪問体制を柔軟に変更する決断が不可欠です。

  • 2人訪問の活用 セクハラリスクが高い、あるいはカスハラが常態化している場合、看護師1人での訪問を禁止し、2人体制に切り替えます。

関係機関(ケアマネジャーや自治体)との外部連携フロー

訪問看護は単独で動くものではありません。ハラスメント事案は、チーム全体で共有します。

  • ケアマネジャーとの連携 「本人・家族の状況が、ケアの提供を困難にさせている」という事実をケアマネジャーに共有し、サービス担当者会議等でハラスメント対策を話し合う場を設けます。
  • 自治体への相談 重篤なケースでは、自治体や警察など外部機関への通報も視野に入れます。「医療職だから我慢しなければならない」という時代は終わりました。地域全体でハラスメントを許さない環境を作ることが、訪問看護の質を維持する絶対条件です。

6. トラブルを未然に防ぐ!日々のコミュニケーションと「内省」の視点

訪問看護サービスとしての適切な「距離感」を保ち、過度な依存を防ぐ

訪問看護では、利用者様と信頼関係を築くことは大切ですが、「親密になりすぎる」とトラブルのリスクが高まります。

  • 適切な境界線(バウンダリー): プロとしての距離感を保つことは、利用者様のためでもあります。プライベートな連絡先を教えない、私的な相談に乗りすぎない、特定のスタッフへの過度な依存を許さないこと。
  • 一貫した態度 誰に対しても公平で丁寧な対応を心がけることが、ハラスメントの対象にならないための防波堤となります。

全てをハラスメントにしないために:自分の対応を「内省」する重要性

何かトラブルがあった時、すぐに「相手が悪い」と決めつけていないでしょうか?

  • プロとしての振り返り 利用者様の冷たい態度や、理不尽とも思える言葉の裏に、自分自身の「タメ口」や「マナーを欠いた態度」「説明不足」が隠れていなかったか。一度立ち止まって自分のケアを振り返る「内省」が、ハラスメントを未然に防ぐ鍵になります。
  • 相手の立場」を想像する 病気や介護による不安、家族の限界など、相手が抱えるストレスを汲み取った上で、丁寧な関わりができているか。自分自身の対応を見直すことで、相手の態度が軟化し、信頼関係が好転するケースも少なくありません。

📌 私たちが忘れてはならない視点も重要です。

現場のあるある

訪問看護の現場では、心ない疑いをかけられてしまうことがあります。

以前、皮膚が非常に脆弱で、少しの刺激でも内出血や皮膚剥離を起こしやすい利用者様を担当したことがありました。

ご家族から、サイズが合わず身体を締め付けるような衣服の着用を求められることもあり、その結果として内出血や傷が生じる可能性もある状況でした。

しかし、傷や内出血が見つかるたびに、「訪問看護で傷つけたのではないか」と疑われてしまう環境でもありました。

そのため、私たちは自分たちを守るためにも、訪問時には必ず複数名で皮膚状態を確認し、新たな傷や変化があれば、その都度ご家族にも確認していただき、同意を得たうえでサービスを開始するようにしていました。

このように、理不尽なハラスメントや一方的な疑いから職員自身を守るためには、日頃からの確実な観察と、それを裏付ける「事実の記録」を積み重ねておくことが重要です。

7. Q&A:訪問看護の現場で迷う「ハラスメント対応」のギモン

Q
認知症の症状による暴言やセクハラも、対策の対象になる?
A

はい。病状によるものだとしても、看護師を守るための対策は必要です。

「認知症だから仕方ない」と我慢し続けると、スタッフのメンタルが限界を迎えてしまいます。疾患由来の言動であっても、物理的な距離をとる、他のスタッフを呼ぶ等の対応は「スタッフの安全を守るための正当な権利」です。また、ご家族にも状況を共有し、主治医やケアマネジャー、多職種と連携しながら、生活環境の見直しやケア方法の工夫について検討することが大切です。

Q
ハラスメントかどうか判断に迷うグレーゾーンな言動、どう対応すべき?
A

ったらすぐに「事実」を共有し、チームで評価しましょう。

個人の判断だけで抱え込むのが一番危険です。「この発言は許容範囲かな?」と迷うような言動こそ、放置するとエスカレートするサインかもしれません。その場の「事実」を上司に報告し、「チームとしてどう捉えるか」を話し合うことで、あなたの感覚が正しいか確認できます。一人で悩まず、「組織のリスク管理の一環」として共有してください。

ほかにも研修資料がありますのでご利用ください。

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8. まとめ

訪問看護の現場におけるハラスメント対策は、単なるルール作りではありません。

それは、私たち看護師が「安心して自分らしく、プロとしてケアを継続するため」の最も大切な基盤です。

密室という環境下では、看護師は時に孤独で無防備になります。

だからこそ、日頃からのチーム連携、客観的な記録を残す習慣、そして自分自身の対応を振り返る「内省」というプロ意識が、私たち自身をハラスメントから守る盾となります。

「看護師だから我慢すべき」という時代はもう終わりました。

スタッフ一人ひとりが安全に守られている現場こそが、利用者様にとって最善で、質の高いケアを届けることができるのです。

この研修資料が、ステーション内での研修や、日々の訪問での不安を解消する一助となれば幸いです。

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【訪問看護事業所向け】

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参考文献

厚生労働省:職場におけるハラスメントの防止のために https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

厚生労働省:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index_00015.html

厚生労働省:あかるい職場応援団(ハラスメント対策の総合サイト) https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

© ケアパワーラボ

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【名前】ちゃんはた
【資格】看護師(正看護師)
【経歴】大学病院にて3年勤務した後、現職は訪問入浴看護師として勤務。

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監修:ぽっか(ケアパワーラボ介護福祉研究所所長)

資格 主任ケアマネ・社会福祉士・鍼灸師・食品衛生管理責任者・防災防火管理責任者・防災士

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