この事例から私たちが学ぶべきこと
📌この記事は、一つの浸水事例を紹介することだけが目的ではありません。今後、同じ状況が起きたとき、多くの支援者が適切に行動できるよう、実際の現場で得られた教訓を、今後の福祉防災に役立てる目的で掲載しています。
災害が発生したときに、皆さんは「避難できれば安心」と考えるのではないでしょうか?
しかし、介護や障害福祉の現場では、避難した後にも支援が始まります。
- 独居で頼れる家族がいない方
- 身体機能の低下により自力で避難できない方
- 医療や介護サービスを受けながら生活している方
このような方にとっての災害は、「命の危険」だけではなく、その後の生活が立ち行かなくなる事態につながる可能性があります。
支援に関わるすべての人が考えるべき課題
今回紹介する事例は、
- 民生委員
- ケアマネジャー
- 相談支援専門員
- 訪問介護
- 訪問看護
- 地域包括支援センター
- 自治体職員
など、地域で支援に携わるすべての人に知っていただきたい事例です。
実際に被災地ではどんなことが起き、どのような支援が行われ、どのような課題が出たのか。
また「支援が必要な人を地域でどう守るのか」を一緒に考えていただければと思います。
どのような災害だったのか
当時の状況
- 発生日:2026年6月3日
- 埼玉県内某市で大雨警報が発表
- 警戒レベル3(高齢者等避難)が発令
- 道路や住宅地が冠水
- 住宅への床上浸水が発生
- 支援が必要な利用者が自力で避難できない状況となった

自力で避難できない利用者Aさん
ヘルパー事業所の管理者のもとに、利用者Aさんから一本の電話が入りました。
☎「起きたら玄関まで水が来ていて、靴が浮いているんだよ……。」
- 独居
- 頼れる親族なし
- 脳梗塞後遺症による片麻痺
- 障害受給者証所持
- アパートの一階に在住
- 自宅内は這って移動
その後、起きたこと
- check1利用者Aさんの担当相談支援員が被災状況を確認

- check2市の危機管理課へ連絡
▸近隣の公民館が避難場所として開設される

- check3近隣住民が警察へ通報
▸警察官が冠水の中、利用者Aさんを背負って救助
そのまま車に乗せて、避難場所へ移送

- check4警報が解除される
▸避難所も閉鎖となってしまう

- check5利用者Aさん宅は浸水している為、帰宅できない状況
▸相談支援専門員が緊急でショートステイを調整し、当日の宿泊先を確保

- check6ヘルパー事業所は福祉タクシーとしてショートステイ先への移送支援を実施

- check7翌日はヘルパーが自宅に訪問、床上浸水によって散乱した部屋の整理を実施

利用者Aさんは非常時持ち出し品を準備しておらず、避難場所では用意された 乾パンと水 で過ごしていました。その後、ヘルパー事業所が好意でお弁当を届けたことが確認されています。
最初の情報共有が支援を左右する
今回の事例では、相談支援専門員が危機管理課へ連絡したことで避難場所の開設につながりました。
行政は地域全体を把握していますが、すべての状況をリアルタイムで把握できるわけではありません。
ではなく、
という意識が、命を守ることにつながっています。
支援者自身が被災してはいけない
冠水した道路や河川へ安易に向かうことは危険です。
『助けようとした人が被災する』
という事故が全国で発生しています。
支援者に求められる役割は、
救助は専門機関が担います。
自ら助けに行こうと危険な場所へ向かうのではなく、適切な機関へつなぐことが重要な支援となります。
避難後に支援が始まった
今回の事例で考えさせられたことは、
「避難後に支援が始まる」
ということです。
避難ができても、
- 今夜はどこで寝るのか
- 食事はどうするのか
- 薬はあるのか
- 明日から誰が支援するのか
という新たな課題が発生します。
特に独居で親族の支援がない方は、「命が助かった」だけでは生活を続けることができません。
✅ その後の生活を支えることまで考えることが、福祉防災には求められます。
この事例から見えた2つの教訓
教訓① 非常時持ち出し品を平時から準備しておく
避難時には、
- 飲料水
- 食料
- 常備薬
- お薬手帳
- 携帯電話
などがなければ、その後の生活に支障が生じます。
「避難をする」だけでなく、「避難後に生活できる準備」が重要です。
✅災害時は「避難できれば終わり」ではありません。避難後の生活に備えるためにも、日頃から非常時持ち出し品を準備しておくことが大切です。
👉 要介護者・高齢者向けの非常時持ち出し品の一例
「印刷して使える|高齢者・要介護者向け防災資料まとめ」ケアパワーラボ
教訓② 平時から地域とのつながりをつくる
今回のケースでは、
- 警察による救助
- 市役所による避難場所の開設
- 相談支援専門員によるショートステイの調整
- ヘルパー事業所による移送支援
- ヘルパーによる部屋の整理
と、多職種が連携したことで生活継続につながりました。
📌支援が必要な方を災害から守るためには、関係機関などが日頃から 連携・つながり をもつ事が重要です。
➤ 実際に、このような地域のつながりをつくる取り組みとして、戸塚西地域包括支援センター様主催の「見守りネットワーク会議」が開催されています。
会議では、高齢者防災や日頃の備えをテーマとした講話に加え、各関係機関がグループワークを通じて、地域での防災について意見交換が行われています。
👉 詳しくはこちら
【戸塚西地域包括支援センター主催】民生委員向け「高齢者防災講習」を実施

このような会議に参加することが地域でのつながりになるんだ。
まとめ
この事例が教えてくれたことは、
「災害から命を守ること」と「災害後の生活を守ること」は別の課題
ということです。
福祉防災では、避難そのものだけでなく、その後も安心して生活を続けられる仕組みを考えなければなりません。
支援が必要な方を地域で守るためには、一人の力では限界があります。
行政、ケアマネジャー、相談支援専門員、地域包括支援センター、訪問介護、民生委員などが、日頃から顔の見える関係をつくり、必要なときにすぐ連携できることが何より重要だと考えます。
※この記事は、実際に支援に関わった関係者への聞き取りおよび現場で確認した内容をもとに作成しています。個人情報保護のため、一部の地域名や属性等は編集していますが、支援の経過および教訓は実際の事例に基づいています。

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