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参考資料:よくある50シーン別 高次脳機能障害のある人に“伝わる説明”便利帖
高次機能障害についてイラスト付きで、とてもわかりやすくまとまっている本です。より詳しく学びたい方におすすめです。
はじめに
高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる様々な認知機能・行動などの障害を指します。
が見られます。これらの障害は、日常生活や社会生活に大きな影響を与えます。
高次脳機能障害の症状
どんな症状があるのかしら?
・記憶障害:新しい情報を覚えられない、過去の出来事を思い出せない。
・注意障害:集中力が続かない、仕事上でのミスが多い。
・遂行機能障害:計画を立てて実行することが難しい、問題解決ができない。
・社会的行動障害:感情のコントロールが難しい、子供っぽい、欲求をコントロールできない。
これらの症状は4大症状と言われているんだ。
他にも、失語、失認症・見当識障害・失行症などがあります。
ただし、これらの症状は個人差があり、同じ障害でも人によって現れ方が異なります。
そのため、支援方法も個別に対応する必要があります。
高次脳機能障害は見えない障害
外見からは分かりづらいので、周囲に理解されず辛い思いをされている人が多いんだ。
配慮しなければならない事はわかるけど、どうやって配慮すればいいのかしら??
私たち支援者、介護スタッフはこの見えない障害に対して、どのような配慮をしていけばいいのでしょうか?
配慮しなければならない事はたくさんあるんだけど、その中でも特に大事なポイントに絞って説明をしていくよ。
高次脳機能障害への理解と配慮のポイント
記憶障害への理解と配慮
記憶障害があると、その場では「わかりました」と返事をするので周囲も大丈夫だろうと思ってしまいます。
しかし、あとから「そんなことは言っていない」などとトラブルになることも多くあります。
また、「今日はヘルパーがくる日だっけ??」など何度も同じ質問が繰り返されるとうんざりしてしまうことにも…。
記銘(きめい)
記憶というと
・思い出す
というイメージだけが湧きやすいですが、実は
・情報を入力(記銘)
・貯蔵(保持)
・出力(想起)
という3つのメカニズムで構成されています。
この3つのどれかにエラーが発生すると記憶障害になると言われています。
今日は情報を入力する記銘の部分に絞るよ。
情報の入力が行われる時に、注意力や処理速度また、理解力が低下していると、入力をする事が困難になります。
そもそも情報の入力がちゃんとできてないと、記憶なんてできないものね…。
【配慮のポイント】注意力をこちらにむかせる為に、〇〇さんと名前を読んでから伝達したり、速度を落としてゆっくり話をしたり、分かりやすく噛み砕いて話すなどの配慮を。
注意障害への理解と配慮
注意の配分
いくつかのことを同時に注意することが困難となります。
電話をしながらメモを書く事などは、注意障害をもつ人には配慮が必要です。
【配慮のポイント】ながら作業が苦手な為、同時に行わなくてもいいように、1つずつ区切って行うなどの配慮を。
方向性注意障害の理解と配慮
見えているにも関わらず、気付けないという症状です。
右脳にダメージを受けると左側にある物に気付けなくなる事があります【左半側空間無視】
気付けない為に物や人にぶつかることが多くあります。
【配慮のポイント】このような場合、移動時や食事の際には声掛けを行い、左側に注意を向けるように促しを。
遂行(すいこう)機能障害への理解と配慮
遂行機能とは
遂行機能とは、目標を成し遂げる為に計画をたて実行していくための機能だよ。
遂行機能は5つの要素から構成されています。
遂行機能の5つの要素
・目標の設定:今日はヘルパーが15時にくるので、それまでの間に外出し用事を終わらせておこう。
・計画の立案:12時に着替える。12時半には自宅を出て14時には用事を終わらせる。
・実行:計画どおりにこなしていく。
・モニタリング:友人と夢中で話をしていたら、帰るのが遅くなってしまった。
・修正:急いで帰ろう。
私たちは、無意識に遂行機能というものを日常で使っているのね〜。
遂行機能は、記憶・注意・視覚認知など様々な機能が正常である事が基本にあるんだ。
遂行機能障害
脳が損傷し、段取りができなくなってしまう事を【遂行機能障害】と言います。
特徴として一つひとつの動作は遂行できますが、外出の準備など一連の動作となると遂行が困難になってしまいます。
遂行機能に障害があると行動の目標や計画がうまく立てられない為、行き当たりばったりに行動してしまう事に…。
具体的には
・遅刻が多い
・目標を決めても何から始めて良いのかわからない
・料理の手順がわからない等
このような場合には、計画表を作成し、次に何を行うのか見えるようにしておくが重要です。
完了したものにはチェックを入れられるようにする事で、今どの段階にいて、残りは何をすれば良いのかわかりやすくなります。
【配慮のポイント】遂行機能障害がある場合は、本人の行動の指針となるような計画表の作成を提案したり、作成の援助をするなどの配慮を。
※計画表の作成は担当支援員がいる場合には支援員に相談してみましょう。
社会的行動障害の理解と配慮
社会的行動障害は大きく7つあるんだ
1:感情のコントロールができない
2:欲求のコントロールができない
3:対人技能拙劣(せつれつ)※拙劣:下手なこと
4:固執性
5:意欲・発動性の低下
6:病識の欠如
7:依存性・退行
感情のコントロールができない
脳を損傷すると感情のブレーキが効きにくくなってしまうことがあります。
突然カッとなったり、暴力を振るうことも…。
ちょっと…怖いわ。
何がその人にとっての地雷か見極める事も重要なんだよ。
怒りは決まった場面やきっかけで生じる事があります。
何がその人にとっての地雷か見極め、地雷を踏まない事で怒りにブレーキをかけることも大事といわれます。
また、感情以外の状態をチェックする事も重要です。言語理解の低下から意思疎通ができなかったりする場合もあります。
怒り出してしまった場合にはどうしたらいいのかしら?
怒りだしてしまった場合には、耳を傾けられる状態ではありませんので、正面から向かわず
・話題を変える
・その場を離れる
などの対応も必要です。
落ち着いてきた頃に怒りの行動について一緒に話をすることで、反省の言葉が聞かれたり、怒りの原因やヒントが見つかる事もあります。
【配慮のポイント】その人の地雷になるポイントを見極め、地雷を避ける。感情以外の状態もチェックする。突然の変化に対応しにくいことを周囲が理解する。
欲求のコントロールができない
脳のダメージにより、理性のブレーキが効かなくなり、欲求が抑えられなくなる事があります。
・お酒の飲み過ぎ
・浪費のし過ぎなどが挙げられます。
その場の気持ちを抑えられない衝動性や見通しが立てられない遂行機能障害、覚えていない記憶障害
など複数の症状が背景にある場合があります。
背景にどんな症状があるのか見極める事が重要です。
何もする事がないと手持ちぶさたから欲求に負けてしまうのよね…。
障害がある人も同じなんだ。日々の日課を作る事も重要なんだ。
お酒は1日1本までなどルールを決める事も重要です。
なぜその行動が良くないのか、本人と一緒に考え本人が納得した上でルールが決められるとより良いと言われています。
【配慮のポイント】浪費などで金銭的な問題が発生する場合には、支援相談員に相談し成年後見人などの制度の利用も検討する必要性もあります。
対人技能拙劣(せつれつ)
高次脳機能障害の症状の1つに言葉以外の意味が理解できず、対人関係がうまく築けない事があります。
コミュニケーションは言葉のほか、顔の表情や身振りなど非言語的なメッセージも含まれるんだ。
言葉以外のメッセージを読むことが困難なのね。
社交辞令がわからず、空気が読めないと敬遠されてしまう事も…。
例えば、社交辞令に対し「自分の事が好きなんだ」と思い込み、毎日のように電話やLINEをしてしまい、相手に迷惑をかけてしまう事があります。
【配慮のポイント】ヘルパーとして曖昧な声掛を行うと、勘違いの原因となる事があるため、誤解を生まないような態度で接するよう配慮を。
固執性
人は誰もがこだわりを持っていますが、高次脳機能障害の症状である固執性は、他人に迷惑をかけたり自分の生活までも脅かす点が問題となります。
〜しなくてはならないという思いが強くなり、自己コントロールが難しくなっているんだ。
ルールやマナーにも固執するあまり、ルールを守らない人を見つけると執拗に責めたり怒ったりしてしまいます。
また、少しの変化にも戸惑い、パニックになることも多くあります。
【配慮のポイント】その人の固執がどこにあるのか?情報として前もって掴んで置くことや観察して探り心理面を支援していく。計画や決まりごとはできる限り変えない、どうしても変えなければならない時は前もって本人に話をしていくなどの配慮を。
意欲・発動性の低下
高次脳機能障害では、行動を発動するボタンが壊れ、意欲・発動性の低下が起こる場合があります。
・以前は活動的だったのに物事に無関心になってしまう
・起きてはいるけど、着替えや洗面をしないでぼーとしている
本人はやるべき事はわかっていて、やり始めればきちんとできることが多いんだ。
【配慮のポイント】行動が始めやすいように声掛けをしたり、行動の取り掛かりだけ一緒に取り組むなどの配慮を。
病識の欠如
自分に障害があることに気づいていない状態・もしくは障害の認識が不足している状態です。
・自分はなんでもできると思っている
・障害を指摘されると怒る・キレる
自分の見た目も感覚も前と変わらないから、すぐには障害と受け止められないんだ。
しかし、専門職に知識として障害があるとこんな症状が出ると教えてもらったり、自分自身の体験で気づいたりすることで徐々に障害を認識していきます。
【配慮のポイント】病識の欠如の理解をする。身近な人から注意などを受けるとキレてしまう事がある為、相談員・リハビリ専門職など中立な立場の人に説明をしてもらうなどの配慮を。
依存性・退行
高次脳機能障害になると子供っぽくなったり、できることも人に頼って自分で判断ができなくなることがあります。
例えば
・興味関心が年齢不相応
・お菓子、ゲームなど子供と本気になって取り合う
・自分の要求が通らないと幼稚な行動をとる
といった行動が現れます。
【配慮のポイント】年相応の振る舞いを一緒に考え促していく。また、自分で何をして良いか分からなかったり、人に頼りがちな時は、具体的な指示をすることで自分でやろうとする気持ちが芽生えてくることがあります。
その他の高次脳機能障害の症状
失認
視覚・触覚など感覚器に障害がないのに、対象のものがわからない事を言います。
例えば、視覚失認ではリンゴを見てもリンゴと理解ができない、もしくは理解するまでに時間がかかったりするんだ。
他にも
・聴覚失認
・触覚失認
などがあります。
【配慮のポイント】見てわからない場合は、触るとわかる場合がある為、ほかの代わりの感覚に誘導する、理解に時間がかかる場合にはテンポを本人に合わせてあげるなどの配慮を。
失語
・話す
・聞く
・読む
・書く
・言葉を理解する
ことが困難な障害です。
滑らかに言葉がでない、質問に適さない答えをするなどコミュニケーションをとることに難しさがあんだ。
【配慮のポイント】突然話を変えるとついていく事が困難な為、話題を変えない、簡潔にゆっくりと話すなどの配慮を。
ただし、配慮のしすぎも問題に…
周囲の配慮だけが大きくなると、いずれ支えられなくなってしまいます。
うまくいかないのは、みんなの配慮が足りないからなんだ‼︎
自分でできることはもう少し頑張ってほしいんだけど…
配慮のしすぎは本人の努力を奪ってしまう可能性があります。
なんでもかんでも配慮すればいいわけではなく、バランスが大事なのね。
ほかにも研修資料がありますのでご利用ください。
まとめ
高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる複雑な障害であり、記憶障害、注意障害、感情のコントロールの難しさ、妄想などの症状が現れます。
治療には主にリハビリテーションが用いられ、家族や周囲の理解とサポートが回復に大きな役割を果たします。
そのため、利用者に接する事が多い訪問介護事業所のヘルパーとして、その症状を理解し、適切なサポートを提供することがますます重要となってきています。