運営指導では、介護保険法に基づく指定基準や関係法令の遵守が厳しくチェックされます。


過去に運営指導で指摘された事例をまとめたので、参考にしてみてね。
運営に関する基準
運営規程・重要事項説明書の不備
- 「苦情処理手順」「事故発生時の対応」が記載されていない。
- 重要事項説明書に「第三者評価の実施状況」の記載がない。
- 利用者負担割合が「1割」のまま更新されておらず、「1~3割」に対応していない。
- 運営規程または重要事項説明書に記載された従業者の員数と実態が違う。
- 交通費規定があいまい。「自動車を使用した場合は1㎞あたり○円」といった明確な記載がない。
- 料金表が最新のものに更新されていない。
✅ 運営指導の備えを具体的に知りたい方はこちら
➤【運営指導の備え|重要事項説明書編】ケアパワーラボ
掲示義務違反
- 「重要事項説明書」「運営規程概要」「苦情窓口」などが事業所内に掲示されていない。
- ウェブサイトでの公表をしていない。
記録・保管の不備
- サービス提供に関する書類(訪問介護計画、サービス提供記録等)の保存年限の誤り(サービス提供から5年ではなく、介護給付があった日から5年間)
- 保存期間内なのに過去の記録を廃棄。
秘密保持・同意関連
- 従業者から秘密保持に関する誓約書をもらっていない、または退職後の秘密保持についての記載がない。
- 従業者または従業者であった者が正当な理由なく、業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らすことがないよう必要な措置を講じていることが確認できない。
- 個人情報利用について、利用者本人からの同意はあるが、利用者家族からの同意がない。
✅ 秘密保持誓約書について具体的に知りたい方はこちら
➤【実地指導対象】秘密保持誓約書編 ケアパワーラボ
苦情処理・事故対応
- 苦情処理マニュアルがない。
- 苦情受付の記録を残していない。
- 骨折など市区町村への報告義務がある事故を報告していない。
- 過去に事故が一度もなかったという理由で、事故報告書の書式を準備していない。
✅ 事故防止の知識と対応はこちら
➤【訪問介護の事故防止の知識と緊急時の対応の研修】ケアパワーラボ
ハラスメント防止
- 方針の明確化・周知・相談窓口設置などの措置が未実施。
✅ ハラスメント防止・指針の整備について具体的に知りたい方はこちら
➤【実地指導対象】ハラスメント防止の指針とマニュアル作成について ケアパワーラボ
変更届の未提出
- 単位数や事務所の場所変更、人員配置変更時に、10日以内の届出をしていない。
BCP・感染症・虐待防止
- 業務継続計画(BCP)が未策定、または研修・訓練が未実施。
- 感染症対策委員会の未設置、指針未作成、研修・訓練が未実施。
- 虐待防止の指針・委員会・研修・担当者配置の不足。
✅ BCP・感染症・虐待防止のせいびについて具体的に知りたい方はこちら
➤【訪問介護事業所で令和6年4月から義務化されたもの】ケアパワーラボ
人員基準に関する不備
訪問介護員の配置
- 常勤換算で2.5人以上が配置されていない。
- 管理者の勤務時間や他施設勤務時間をカウントしている。
- 介護職員初任者研修課程修了者を、サービス提供責任者にしていた。
- サービス提供責任者自身もサービスに多く入っており、他の訪問介護員への研修・技術指導が不十分な状態。
勤務体制・勤務表
- 常勤・非常勤別、職務内容、兼務状況などが明記された勤務表を月ごとに作成・保存していない。
- 出勤日・勤務時間を確認できるタイムカード等の整備不足。
サービス計画に関する基準
訪問介護計画の不備
- サービス変更時に計画を修正していない。
- 個別サービス計画について、具体的なサービス内容等の記載がない。
- 利用者・家族への説明と同意、交付が徹底されていない。
- ケアプランと訪問介護計画の内容が不一致。
- 期間の過ぎたケアプランしか保管していない。
- サービス提供前に個別サービス計画を作成していない。
- 訪問介護計画を継続するか否か、検討した記録が残されていない。
アセスメント・モニタリング不足
- ケアマネジャーから受領したアセスメントやフェイスシートをもって、サービス提供責任者がアセスメントをしたことにしていた。
- モニタリングを実施せず、評価や満足度調査も未記録。
- アセスメントやモニタリングの未実施、または実施頻度不足。
サービス提供記録
記録の内容不足
- 「特変なし」としか記載されていない。
- 買い物代行での金銭授受の記載がない。
- 実際の開始・終了時間を記載せず計画のまま記入。
介護報酬・加算に関する不備
基本算定
- 実際と異なる回数・月で算定。
- 家事援助を身体介護として算定。
- 通院介助において、介助が必要ではない診察時間やタクシー移動時間等も、所要時間に含んで算定している。
- サービス時間短縮でも予定時間で請求。
- 20分未満のサービス提供時間であったにもかかわらず、身体介護1を算定。
- サービス提供の記録により確認された月と異なる月で介護報酬を算定。
- サービス提供の記録により確認された回数と異なる回数で介護報酬を算定。
- 通常実施地域外での交通費・駐車料金徴収。
- 2時間未満の連続サービスを別々に算定(看取り期除く)
- 院内介助の算定要件(利用者が院内での移動・排せつ介助等が必要な身体状態にある、または自傷・他害の危険性があるため他者の見守りが必要な状態にあること、および院内スタッフが利用者の介助ができないことを医療機関に確認し、その旨の記録が残されていること)の確認ができない。
特定事業所加算
- 個別の研修計画が、事業所の全体研修を転載しただけの、全体研修と同じ内容だった。
- 月1回以上の会議未開催。
- サ責の指示が文書でなく電話のみ。
- 指示内容が「変化なし」等の形式的記載。
- 全職員に定期健診を実施していない。
加算・減算
初回加算
- 初回加算の算定について、算定要件を満たしていること(サービス提供責任者の初回訪問または同行の証跡)が確認できない。
緊急時訪問加算
- 要請の時間や内容が記録不足。
早朝・夜間加算
早朝・夜間加算
- 早朝・夜間、深夜の訪問介護の取扱いについて、居宅サービス計画及び訪問介護計画に位置付けられていない時間にサービスを実施した際に当該加算を算定。
処遇改善加算
- 計画書を職員に周知していない。
同一建物減算
- 事業所が所在する建物の居住者にサービス提供をしていたが減算をしていない。
研修
- 年間研修計画を立てていない。
- 実施記録(日時、内容、参加者、欠席者対応)が残されていない。
まとめ
運営指導では「形式だけ整えればいい」では済まされず、運営規程から加算要件、記録の一行一行まで細かく確認されます。
今回まとめた指摘事例は、どの事業所でも起こり得るものばかりです。
- 記載漏れ・掲示漏れ → 形式不備でも指摘対象
- 記録不足 → 「特変なし」や時間未記載は不適切
- 算定要件の不確認 → 返還リスク直結
- 加算要件を満たす証拠が残っていない → 会議・研修の実施の記録が必須

つまり、「知らなかった」「うちは大丈夫」では通用しないということ。
事業所を守るために必要なのは、
- 規程・書式を最新に整備すること
- 記録を正確に残すこと
- 要件を確認し、証跡を保存すること
- 組織全体で共有・改善を繰り返すこと
どの指摘も「小さな不備」から始まります。
放置すれば、減算・返還・行政処分といった大きなリスクに直結します。
今一度、自事業所の仕組みと記録を見直し、指摘される前に自ら改善する姿勢が求められています。
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