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この記事の一番最後にあるよ!
はじめに
フレイル:2014年に日本老年医学会が学術用語として提唱。
サルコペニア:1989年にアメリカの学術雑誌で提唱。

ここでは用語の意味や、予防のためにできることを見ていきます。
フレイルとは

フレイルとは、高齢者が健康と要介護の中間にある状態を指します。
簡単に言うと、加齢に伴い、筋力や認知機能が低下し、生活の自立度が徐々に失われていく状態。(≒要介護の前段階)を指します。
フレイルの原因
フレイルの原因は多岐にわたり、身体的・認知的・社会的な要因が絡み合っています。
・身体的フレイル
・認知的(心理、精神的)フレイル
・社会的フレイル
身体的フレイル
身体的フレイルとは、フレイルの多面的要素の中の代表的なもので運動器(骨、関節、筋)の機能の低下を示すものです。
放置すると転倒や介護が必要な状態に進行するリスクが高まります。
認知的フレイル
認知的フレイルとは、高齢者において認知機能(記憶力や判断力など)が低下しつつあるが、まだ日常生活には大きな支障をきたしていない状態を指します。
主な特徴としては
・記憶力や注意力のわずかな低下。
・新しいことを学ぶのが少し難しくなる。
このような事を指します。
社会的フレイル
社会的フレイルとは、家族や友人・知人との交流機会が減少するなど、社会的に脆弱(ぜいじゃく)な状態にあることを指します。
フレイルサイクル

フレイルは大きく4つの要素に分かれていて。これは連鎖していくことでさらに進行してしまうんだ。これをフレイルサイクルと言うんだよ。

①低栄養・体重減少
高齢者になると噛む機能の低下などにより、1回の食事量が少なくなるため、栄養素が不足します。
②サルコペニア(筋肉量の減少)
①の低栄養状態が続くと、筋肉量の減少(サルコペニア)が進みます。
また、足の筋肉が減ることで歩く速度が遅くなるなどの運動器障害(ロコモティブシンドローム)も進んでいきます。
③基礎代謝の低下、活動量の低下
②の筋力量・運動量の減少によって基礎代謝が下がると、疲れやすくなったり活力が低下してしまい、日常生活での活動量がさらに減っていきます。
ここに認知機能の低下なども加わると、外出や人との交流が億劫(おっくう)になるなど、日常生活にも支障をきたすようになります。
④食事量の減少・食欲の低下
③の外に出なくなるなどの活動量が減ることによってますます食欲が低下し、食事量が減少していきます。
すると、低栄養が更に悪化するという負のループに陥ります。
このように、フレイルの要因が重なり、悪循環に陥った状態のことを「フレイルサイクル」と言います。
このサイクルは悪循環に陥りやすいため、早期に介入し、適切な運動や栄養管理、社会的なサポートを提供することが重要です。フレイル状態の予防には、日常的な健康管理が欠かせません。

フレイルになったらもう元に戻らないのかしら?
フレイルには「可逆性」という特性があります。
※可逆性(かぎゃくせい):元の状態に戻ることができる性質や特性
自分の状態と向き合い、予防に取り組むことでその進行を緩やかにし、健康に過ごせていた状態に戻すことができます。

2020年度から後期高齢者に対してフレイル健診が導入されたから、フレイルの知名度は上がってきているんだ。

フレイルの判定方法


フレイルの判定方法ってあるのかしら??
身体的フレイルの判定方法
身体的フレイルの判定方法にはCHS基準というものがあります。アメリカのリンダ・フリード博士らによって2001年に提唱されました。
①体重減少
②活動量減少
③活力低下
④握力低下
⑤歩行速度低下
の5項目から構成されているもので3項目以上該当するとフレイルと判定します。
CHSの日本版としてJーCHSというのがあり、日本の厚生労働省がCHS基準を基に、日本の高齢者の特性に合わせて改良したものです。
JーCHS基準
・体重減少
【質問】6ヶ月間で2kg以上の体重減少があったか。
・運動量減少
【質問】軽い運動・体操を1週間に何日くらいしているか。
【質問】定期的な運動・スポーツを1週間に何日くらいしているか。
(いずれもしていないで該当)
・活力低下
【質問】(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
・握力低下
握力(男性28kg未満、女性18kg未満)
・歩行速度低下
歩行速度(1.0m/S未満)
3〜5項目に該当でフレイル
認知的フレイルの判定方法
現時点では認知的フレイルに関して国際的に統一された具体的な「判定基準」は存在しません。
身体的フレイルと認知機能の低下を兼ね備えている場合と定めていることが一般的になります。
認知的フレイルは
・身体的フレイル
・心理・精神的フレイル(認知機能低下部分)
の部分的な一致という位置付けになります。
例)歩行速度や握力の身体的低下が、認知機能低下と関連していることが多いため、身体的フレイルの評価もあわせて行います。
社会的フレイルの判定方法
社会的フレイルの判定基準は、高齢者が社会的なつながりや活動を失い、孤立や社会的支援の欠如が健康に影響を及ぼすリスクを評価するために用いられます。
①独居
②近隣住民との交流
③社会参加
④主観的経済困難感
このうちの2つ以上該当で社会的フレイルと判定します。

社会的フレイルには、目に見える症状がないから本人や周囲も気づきにくいんだ。

目に見える症状がないんだったら社会的フレイルになっても気にしなくていいんじゃないの?
地域包括支援センターの対策


社会的フレイルになると要介護リスクが高まるんだよ。早期発見・対策が非常に大切なんだ。そこで、地域包括支援センターでは様々な対策を行っているんだよ。
地域包括支援センターでは、社会的フレイルを予防するためにさまざまな対策を講じています。
- 社会参加の促進: 地域のイベントやサークル活動、ボランティア活動などを通じて、高齢者が社会とつながりを持ち続けることを支援しています。
- 健康教育と運動プログラム: 健康講座や運動教室を開催し、適度な運動や健康的な生活習慣を促進しています。
- 相談支援: 高齢者やその家族が抱える問題や悩みを相談できる窓口を設け、適切な支援を提供しています。
- 地域ネットワークの構築: 地域の医療機関や福祉施設、ボランティア団体などと連携し、包括的な支援体制を整えています。
サルコペニアとは

サルコペニアとは、加齢に伴う骨格筋量の減少を意味する造語です。
そのためサルコペニアは身体的フレイルの一つの構成要素という位置付けになります。

サルコペニアは単純に筋力の低下のことなのね。
対策について
フレイル対策には
・運動
・食事
・社会参加
という3つの柱と呼ばれる対策がありますが、これらの土台になるのが規則正しい生活です。

規則正しい生活といえば、やっぱり早寝早起きよね~。お年寄りはみんな早寝早起きだろうし、大丈夫なんじゃないの??

そうとも限らないよ。
特に独居や交流が少ない人は、誰かに時間を合わせる必要がないから好きな時間に寝起きしている人も多いんだ。
そのような時はまず「必ず決まった時間に昼食を食べる」という事がいいと言われています。
それは、3食の真ん中になる昼食の時間を決めることで、徐々に朝・夕の食事時間も固定するからです。
また昼食の準備の前に買い物に行って、支度をして…と、昼食の前後の予定も決まりやすくなってきます。
必ずしも昼食の時間を固定することから始める必要はありませんが、一番ハードルが低く取り組みやすいと言えます。
運動
高齢者であっても適切な運動を行うことで、十分な効果が得られると言われています。
・身体機能の向上
・転倒、骨折予防
・日常生活の動作改善
・認知機能や精神機能の改善効果
など多岐にわたる効果が期待できます。

やはり運動なのね!ウォーキングが一番いいのかしら?

たしかにウォーキングは健康に良いと言われているし、簡単で続けやすくて良いんだけど、ウォーキングがフレイル対策として最適とは言い切れないんだ。
サルコペニア対策では、レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)が必要不可欠です。
一方で、日常生活動作の改善や転倒予防など、より複合的な機能向上が求められる場合は、レジスタンス運動だけでなく、バランス運動とウォーキングなども組み合わせた運動が効果的です。

運動量の指標として、総実施時間が1年以内で25時間以上を目安にするといいんだ。

1回あたりの運動時間が30分だとすると、それを週1回、約1年間継続したら総実施時間が25時間になるわね。それならできそう!
食事
いろんな品目をバランスよく食べることが良いと言われていますが、特にフレイル・サルコペニア対策にはたんぱく質の摂取が重要です。
フレイル・サルコペニア対策とした場合、少なくとも体重1kgあたり1gのたんぱく質を毎日摂取することが望ましいとされています。
※腎臓はたんぱく質の代謝による老廃物を排出する役割を担っていますが、腎機能が低下すると負担が増します。そのため、腎不全の方などはたんぱく質の摂取量を調整する必要があります。医師からどのような指示が出ているのか確認をするようにしましょう。

たんぱく質がどれぐらい摂れているか把握するのって難しいわね。。。

生活に取り入れやすい指標として、手ばかり栄養法や食品目数のカウント、栄養成分表示の確認などがわかりやすいかもね。
・手ばかり栄養法とは:
手のひらを秤として栄養コントロールを行うもので、たんぱく質を多く含む食材が両手のひらにのるくらい(厚みも手と同じくらい)が1日分の目安になります。
・食品目数カウントとは:
食品目数とたんぱく質の摂取量は比例関係にあり、食品目数が増えるとたんぱく質の摂取量も増えます。20〜30品目以上の摂取を目標にします。
社会参加
社会参加の促進に向けた標準的な介入方法はありませんが、支援者はその地域に存在する様々な資源(活動)を把握していることが大切です。
いわゆるインフォーマルサービスを含め、広く交流を保つことが重要だと言われています。
※インフォーマルなサービスとは:正式または公式な手続きや形態を伴わないサービスを指します。例えば、隣人やボランティアが庭仕事を手伝うこと。
その人によって嗜好(しこう)が異なるため、様々な社会参加の場所を知っておくことで、提案や紹介がしやすくなります。

社会参加の具体例として男性であれば、就労する事がおすすめだよ。

女性だったら、ボランティアや通いの場、カルチャー教室や町内会の行事に参加とかが良さそう!
地域で行なっている資源(活動)の情報は
・役所
・社会福祉協議会
・地域包括支援センター
・図書館
・公民館
・福祉会館
・掲示板
・広報誌
から得られます。
ヘルパーができる支援

生活習慣をつける
先述した通り、規則正しい生活を送ることがフレイル対策の土台になります。
支援時間を固定することで、生活リズムを作ることができます。

ヘルパー支援時間から1日の生活リズムが作られることもあるのね。
気付いたことを情報共有する
専門的な知識がなくても構いません。
「最近あの人、家に篭りがちで誰とも交流していないみたい」
「なんだか立ち上がりにくそう・・・」
「寂しいって言うことが増えて、前より元気がないみたい」
など利用者やその近隣の住人に対し、日々の関わりの中で気づいたことがあれば、関係機関内で情報共有しましょう。
関係機関と情報共有しアセスメントすることで、必要な支援に繋げることができます。

管轄の地域包括支援センターに相談してみてね。
食事内容を意識する
ヘルパーは買い物や調理などで、食事に関わることが多いと思います。
・食品目を増やすこと
・たんぱく質を摂取すること
を意識して食事への介入をしてみましょう。

ほかにも研修資料がありますのでご利用ください。
おわりに
フレイル・サルコペニアについて、言葉の意味から対策について見ていきました。
フレイル・サルコペニアについてしっかりと学び、高齢者の支援に入る際には、フレイル・サルコペニア予防の視点で日々の支援に入りましょう。
