介護事業所の悪性腫瘍の理解と研修

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良性腫瘍と悪性腫瘍

腫瘍とは

腫瘍とは体内の細胞が異常に増殖してできる塊（かたまり）や隆起のことです。

体の細胞が無目的に過剰な増殖をしていきます。

良性腫瘍と悪性腫瘍の違い

	良性腫瘍	悪性腫瘍
発育の形式	膨張性（境界が明瞭）	浸潤性（境界が不明瞭）
発育の速度	遅い	早い
転移	ない	多い
再発	少ない	多い
全身への影響	ほとんどない	著しい

※粉瘤（ふんりゅう）とは数mm～数cmのしこりが皮下にできる病気で、ドーム状に盛り上がってみえます。脂肪のかたまりといわれることがありますが、垢（あか）が溜まってできます。

日本における死因（２０２３年）
第１位　悪性新生物（腫瘍）２４.３％
第２位　心疾患　　　　　　１４.７％
第３位　老衰　　　　　　　１２.１％

悪性腫瘍の転移

転移の種類

【リンパ行性転移】
体のリンパの流れにのってリンパ節（首・脇・股など）へ転移する。

【血行性転移】
血液の流れにのり、肺へ転移する。

【播種(はしゅ)性転移】
お腹や胸の中に存在するガンが腹膜や胸膜にまき散らされたように拡大する。

転移先

転移先は原発となるガンの部位によって異なります。

• 肺癌・乳癌・腎癌・胃癌・大腸癌→肝臓へ転移
• 肺癌→脳へ転移
• 肺癌・乳癌・腎癌・胃癌・前立腺癌→骨へ転移

骨転移による骨折リスク

骨転移をしている部分はちょっとした力が加わるだけでも骨折を生じる場合があります。

そのため、悪性腫瘍の利用者の介助を行うにあたって骨転移には特に注意が必要です。

特に骨転移を起こしやすいのは肺癌・乳癌・腎癌・前立腺癌、加えて膀胱癌・子宮癌でも見られます。

骨転移の好発部位

骨転移を生じやすいのは脊椎・骨盤・大腿骨です。

脊椎への転移では脊柱管内が圧迫され麻痺（足の運動機能障害）が生じることもあります。

癌の骨転移は半数以上が多発転移です。
生命予後がある程度期待できる場合は、骨転移に対して放射線治療や予防的な手術を行うことがあります。積極的な治療をしない場合には、骨折のリスクに応じた安静度の確認が必要です。しかし、ターミナルの利用者に骨折のリスクがあるために寝たきりを強制し残された貴重な期間のQOLを損なうことは好ましくありません。チームで総合的に判断をすることが大切となっていきます。

薬物療法

薬物療法の目的

癌における薬物療法の目的は

・癌を治す（治癒）

・進行を抑える

・癌による体の症状を緩和する（延命・症状緩和）

ことです。

※癌やその薬物療法による症状を和らげるために鎮痛剤や吐き気どめなどを使う治療は「支持療法」と言います。

「治癒」

癌が治るかどうかは種類や進行具合によって決まります。

一部の血液やリンパの癌などでは薬物療法のみで治癒を目指すことができますが、多くの癌では手術や放射線治療を併用することがあります。

「延命・症状緩和」

癌が進行していた場合や手術後に再発した場合など、治癒が難しい状況では、延命や体の症状の改善を目的とした薬物療法を行います。

薬を体内に入れる経路

・内服

・静脈内注射（点滴）

・皮下注射

・筋肉注射

などがあります。

本人や家族が自宅でも安全に点滴をすることができるように「cvポート」と呼ばれる装置を埋め込む場合があります。

※点滴ルート：点滴の管・チューブのこと

自分のサービス中に起きたことでなくても、利用者が動いて抜けてしまう場合もあります。
訪問時に点滴箇所が濡れていたり様子がおかしいことがあれば迷わず報告しましょう。

薬物療法の副作用

抗がん剤による副作用は多岐に渡ります。中には命に関わる可能性が高い副作用もあります。

抗がん剤の副作用は身体的にも精神的にも苦痛を感じるものが多くあり、抗がん剤治療の継続が困難となり効果を得る前に中止せざる終えない場合も多くあります。

骨髄への影響

血液を作る骨髄へ影響を及ぼすことで造血障害・血球の破壊が起こります。

造血障害により白血球や血小板などが減少します。白血球が減少することで、細菌などで感染しやすい状態となります。

血小板の減少では、出血が起こりやすく血が止まりにくい状態となります。

また、貧血で立ちくらみ・息切れ・めまい・ふらつき・頭痛などの症状も見られます。

消化器への影響

抗がん剤投与によって高い頻度で出現するものの1つです。

・吐き気

・嘔吐

・食欲不振

・便秘

・下痢

・口内炎

などを引き起こします。

心臓への影響

・動悸

・息切れ

・呼吸困難

・むくみ

・体重増加

などの症状があります。

肝臓への影響

ほとんど自覚症状はないといわれる事が多く、血液検査に肝臓の機能を確認していきます。

腎臓への影響

腎臓に影響が出ると

・吐き気

・疲労

・かゆみ

・呼吸困難

などが見られます。

夜間頻尿となることが多いですが、進行すると尿量が低下します。

神経への影響

手足のしびれや冷感刺激に敏感になるといった症状が見られます。

しびれにより

・ボタンがかけにくい

・物が上手く掴めない

・文字を上手く書けない

などの症状が現れます。

一度症状が出ると、回復までに時間がかかります。

皮膚への影響

・発疹

・紅斑

・色素沈着

・乾燥

などの皮膚症状が見られます。

性腺への影響

女性の場合には無月経や早期閉経があります。

一時的な場合もあれば永久的に失われることもあります。

男性の場合には無精子症などを引き起こし不妊症になる可能性があります。

関わり方

悪性腫瘍のある利用者の方は、がんの痛みや薬物療法の副作用に耐えながら、再発や予後への不安・恐怖と戦って生活をされています。

その不安や恐怖に対して、私たちは「思いやり」のある関わりを行い、利用者・家族に安心感を与える事がより重要となります。

思いやりの心を伝える方法

話に耳を傾ける

・利用者や家族が話しているときは、目を合わせて話を聞きましょう。

※逆に過度に見つめることはNG。

相手に体を向ける

・会話をする際、体全体を利用者に向けて話すことで、真剣に聞いていることを示します。

話をさえぎらない

・相手が話し終わるまで待ってから、自分の意見を述べるようにしましょう。

目の高さを合わせる

・上から見下ろされると、無意識に緊張を感じたり、防御的な態度を取ってしまうことがあります。

相槌を打つ

・相槌を打つことで、利用者に対して関心を持っていることを伝えることができます。これにより、利用者は自分の話がちゃんと聞かれていると感じ、安心します。

共感する

・会話の中で「わかります」などと共感を示す言葉を使う事で、理解をしてもらえたという効果があります。

こういった基本的な聴く姿勢によって利用者・家族に安心感を得てもらうことができます。

より詳しく学びたい方は過去の研修資料を参考にしてください⇓⇓

傾聴のすすめ（聴く技術向上のための研修）

相談

一生懸命、利用者の話を聞いて支援をしていると、介助者自身も気持ちが疲れてしまうことがあります。
そうなることを避けるために、自分のチームの中での役割は何かを見直し、一人で抱え込まずに先輩へ相談をしたり、チームで様子を共有していきましょう。

まとめ

スタッフ一人一人が悪性腫瘍についての正しい知識を持ち、適切な対応ができるようにすることで、利用者とその家族に安心と信頼を提供することができます。

また、チーム全体でのスキルアップを図る事で、より質の高いケアを提供し、利用者のQOL（生活の質）を向上させることができます。

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