【社会福祉士が解説】介護サービスで出会う8050問題と対応の基本

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※本ページはプロモーションが含まれています。ご了承ください

はじめに

私たちは、利用者宅で「これはどうしたらいいのだろう…」と迷う場面が本当に多い仕事です。

🔻例えば、サービス中にこんな経験はないでしょうか??

  • 冷蔵庫を開けてみたら、ほとんど何も入っていない。
  • 利用者が「息子が働かないからお金が足りないのよ」と訴えてくる。
  • 介護度が上がっているのに「これ以上サービスを増やしたら生活できなくなる」と断られた。

このような場合、親子共に支援が必要なケースとして、

8050問題の要素を含んでいるかもしれません。


以前は「ひきこもり」というと若い人の問題だと考えられがちでしたが、今では年齢層が広がり、親も子も高齢化しています。

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8050問題とは

「8050問題をイメージしたイラスト。高齢の親と中高年の子が孤立した家庭で暮らしている様子。」
8050問題

「80代の親」と「50代の子ども」が同居していて、子どもが長期間ひきこもりや無職の状態にある家庭で、親の介護や生活支援を担う人がいないまま、親子ともに孤立・困窮していく状況を指します。

親の年金や貯金を頼りに生活しているため、親が高齢で要介護になると家計も介護も一気に苦しくなります。

この問題は、単なる「親子の問題」ではなく、社会全体が抱える課題です。

「怠けている」ではなく「支援が届いていない」

ぽっか
ぽっか

「働かないのは本人の怠け」と思われがちだけど、実際にはいくつもの要因が重なっているんだ。

「8050問題の三つの要因を示す図。社会的要因・家族の要因・個人の要因が重なり合い、問題が複雑化している様子。」

社会的な要因

  • 就職氷河期世代(概ね40歳〜55歳)で、若いころ正社員になれず非正規社員・アルバイトだった。
  • 学校や職場での競争が激しく、挫折経験を抱えている。
  • 家に長い時間こもることで、仕事に必要なスキルが身に付かない。

✅就職氷河期世代:おおむね40歳から55歳の人を指し、バブル崩壊後の厳しい雇用環境下で就職活動を経験した世代。

家族の要因

  • 親が生活費を出し続けることで自立できなくなった。
  • 世間体や、子どもに「怠けている」というレッテルを貼りたくないという気持ちから、外部の支援をためらう。

個人の要因

  • 職場での人間関係トラブル・リストラで立ち直れない
  • うつ病などの精神的な問題がある。
  • 発達障害などで環境に適応できない。

つまり、本人だけの問題ではなく、社会や家庭の事情も重なり合っている状態です。

ひきこもりの方は、社会への罪悪感やプライドから、助けを求めること自体ができない場合も多くあります。そのため「支援が届いていない」状況にあると理解することが重要です。

8050問題は実際に何が問題となるのか??

「階段を登る途中で立ち止まり、困っている人のイラスト。8050問題で生じる生活の困難や行き詰まりを表している。」

長期化するひきこもりで負のループに…

一度社会から離れると、なかなか元の生活に戻ることが難しいのが今の社会です。

特に中高年になってからの再就職は、年齢やブランクがあることでさらにハードルが高くなり、ひきこもりが長期化すると、外に出ることや人と関わること自体が大きなハードルになります。

また、40代や50代で職歴が途切れていると、再就職の場は限られ、選べる仕事も少なくなります。

仕事に就けないことで、親の年金に依存してしまうといった負のループに…

経済的困窮

子が無職で収入が不安定なため、親の年金が家計の主な収入源になります。

年金だけでは生活費・医療費・介護費をまかなえず、慢性的な赤字家計に陥るケースが多いです。

社会的孤立

ひきこもりの問題は、本人だけでなく家族も深く関わっており、特に親が「恥」と思ってしまう事から状況を隠してしまうケースが多い事もあります。

親子ともに家に閉じこもりがちになり、外とのつながりがなくなる。恥や遠慮から支援を求めづらく、親子の依存関係が強まって、ますます社会から孤立していきます。

周囲に相談せず、支援機関との接点を持たないまま年月が経過することで、問題が深刻化し、支援につながりにくくなる傾向があります。

✅長期間にわたり親子だけで生活していると、介護疲れや感情の衝突が積み重なり、思わぬトラブルや虐待につながることもあります。
【訪問介護の高齢者虐待防止の研修】ケアパワーラボ

問題にならないケースもある

「8050」って言葉を聞くと、すぐに何とかしなきゃいけないと捉えがちです。

しかし、実は全部がそうではありません。

お金に余裕があって、働いていない子供がいても、家族でうまくやっているところもあります。

ですので、「8050だから問題」と決めつけるのも危険です。

大切なのは、その人や家族がどんな暮らしをしているか、何に困っているかを見極めること。


必要なときに、そっと支えられるように見守る姿勢こそが本質です。

問題にならないケース(リスクが小さい例)

• 親と子の間で良好なコミュニケーションが取れている。

• 社会や支援機関とのつながりがある。

• 親子ともに経済的に自立している(資産があるなど)

今は安定していると見える家庭でも、ちょっとした事で状況は変わりますので、常に気にかけておく必要があります。

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8050問題を見かけたらどうする??

私たちは、家庭の様子を日常的に見ているからこそ、いち早く異変に気づける貴重な存在です。

「赤いアンテナが光る介護職員のイラスト。家庭の異変にいち早く気づく“気づきのアンテナ”を表している。」

役割としては、「気づきのアンテナ」を持って困りごとを早期に発見し、適切な支援機関に「つなぐ」ことです。

きなこ
きなこ

具体的な支援を行うのは専門機関だけど、そのきっかけを作るのは私たちの日々の働きかけね。

「気づき」と「つなぐ」

🔻訪問サービスでは、利用者本人だけでなく家庭の様子も目にします。

  • 気づく:冷蔵庫、部屋の様子、光熱費の督促状など生活のサインを拾う
  • 報告する:ケアマネやサービス提供責任者に「生活費が原因でサービスを抑えている」と伝える
  • つなぐ:ケアマネを通じて包括支援センターや役所につなぐ

直接支援制度を勧めない理由

利用者や家族にどんな制度を勧めるかの判断は、専門職や自治体が行います。

「この制度を使ったほうがいいですよ」と勧めるのは責任が持てず、家族の信頼を失ってしまう可能性があります。

実際の事例

私が担当した利用者の実際のケースを紹介します。

ケース:山田さん親子(仮名)

山田さん(80歳・要介護2)は年金8万円で息子と二人暮らし。息子(52歳・無職)の生活費も山田さんが負担。


「80歳で要介護2の母・山田さんと、52歳で無職の息子を描いたイラスト。典型的な8050問題の家庭構成を示している。」


山田さんは、介護サービスを増やしたい気持ちはありましたが、

「これ以上は生活できないから」

と利用を抑えていました。

ヘルパーからは以前より、


「生活費の不足でサービスを削っている」
「冷蔵庫が空に近い状態」


といった報告を受けており、

私(ケアマネ)も支援が必要な状況と判断していました。


しかし当時は本人が

「まだ大丈夫」

と話しており、支援機関への同意が得られませんでした。

ところが、山田さんが肺炎で入院。

ほとんど所持金がなく、医療相談員から

「このままでは入院生活も、その後の生活も成り立たない」

と連絡が入りました。


そこで私(ケアマネ)は、これまでの生活状況とヘルパーからの情報を整理し、地域包括支援センターに報告。

その結果、息子の生活も含めた支援が必要と判断され、

「生活困窮者自立支援制度」

へとつながり、家計相談や一時的な貸付、就労準備支援が開始されました。

日々の関わりの中で、ヘルパーが「気づき」のアンテナを持ち、共有してくださったことで、支援の方向性を見つける大きなきっかけとなりました。

気づくためのアンテナを持ちましょう。

🔻気づくためのアンテナ

  • 冷蔵庫の中が極端に少ない。
  • サービスを追加したほうがいいのに拒否がある。
  • 光熱費の滞納通知がある。
  • 極端に節約している。
  • ゴミがたまって生活が乱れている。

こうしたサインを見たら「何かあるかもしれない」と思うことが大切です。

ぽっか
ぽっか

次は、制度と窓口について簡単に理解しておこう。

生活困窮者支援制度

この制度は、一言でいえば
生活保護になる前の段階で支援する仕組みです。

病気や失業、家庭の不和などで生活が立ち行かなくなった人に対して、仕事・お金・住まいなどの相談をまとめて受ける制度です。

🔻主な内容は以下の通りです。

  • 自立相談支援事業:生活全体の相談窓口。支援員が課題を整理し、一緒にプランを立てます。
  • 住居確保給付金:家賃が払えない人に、一定期間家賃を補助。
  • 家計改善支援:家計簿の見直しや債務整理の相談。
  • 就労準備支援:働く前段階の生活訓練や社会参加支援。

この制度の窓口は、市区町村の「自立相談支援機関」(多くは社会福祉協議会が担当)です。

ひきこもり地域支援センター

こちらは、
ひきこもり本人や家族の相談を受ける“都道府県設置の専門窓口”です。


保健師・心理士・ソーシャルワーカー等が常駐し、必要に応じて医療機関や地域の支援機関と連携します。

簡単に言うと、
ひきこもり支援の「ハブ」となる機関です。

「厚生労働省作成のひきこもり支援体制図。都道府県・市区町村・関係機関が連携して、ひきこもり当事者や家族を支援する仕組みを示している。」

画像引用:厚労省 ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤 001471237.pdf

8050問題に気づいたときの流れ

🔻流れは次の通り。

≪8050問題に気づいたときの流れ≫
  • step1
    まずはサービス提供責任者・ケアマネに状況を報告

  • step2
    ケアマネから地域包括支援センターに相談
  • step3
    地域包括支援センターが相談先を判断

    状況に応じて最適な機関へつなぎます。

    🔻経済的な困りごと

    → 自立相談支援機関

    🔻社会的孤立

    → ひきこもり地域支援センターなど

このように、ヘルパーが最初に“気づいて、ケアマネにつなぐ”ことで、世帯全体の支援へ広げることができます。

✅地域包括ケアの考え方を知ることで、8050世帯への支援の幅は大きく広がります。

訪問介護の地域包括ケアシステムの理解研修 ケアパワーラボ

相談先の一覧

  • 地域包括支援センター:介護や生活全般の相談窓口
  • 生活困窮者自立支援機関:就労・家計・住居の支援
  • ひきこもり地域支援センター:長期ひきこもりの相談
  • 精神保健福祉センター:心の問題や精神疾患の相談
  • 市区町村の福祉課・生活支援課:生活保護や重層的支援体制の窓口など

※地域によって名称は異なります。

✅利用者やご家族からのしつこい依頼や、「少しくらいやってくれてもいいでしょ?」という圧力に悩んだことがある方へ。
どう対応すればいいのか──

利用者・家族からのカスタマーハラスメントへの対応と防止策|ケアパワーラボ

≪訪問介護向け研修資料一覧はこちら|ケアパワーラボ≫

「訪問介護スタッフ向け研修資料一覧|ケアパワーラボ」

▶ 関連記事:「法定研修の全体像をまとめてチェックするならこちら」
https://care-power-lab.com/category/nursing-care-training-materials/statutory-training/

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まとめ

8050問題は、単なる家族の問題ではなく、社会全体で考えていくべき課題です。

私たちは日々の訪問を通じて、困っているご家庭の「気づき」のきっかけを作り、適切な支援機関に「つなぐ」という、かけがえのない役割を担っています。

「気づく → 伝える → つなぐ」


この流れを意識するだけで、家庭が孤立のまま崩れてしまうのを防ぐ可能性が高まります。

地域で暮らす私たちみんなが、互いに支え合い、誰もが安心して暮らせる社会を目指していきましょう。

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ケアパワーラボ代表|介護・福祉研究所|BCP研修講師
鍼灸治療院⇒デイサービス相談員⇒ケアマネ⇒医療相談員(MSW)⇒主任ケアマネ
現場で10年以上の経験を持つ現役ケアマネ。
現在は訪問介護事業所を中心にBCP研修・防災研修の講師を担当。
複雑な介護保険・福祉制度をわかりやすく! をモットーに日々奮闘しながら現場に役立つ情報発信を続けています。
YouTube: https://www.youtube.com/@solutionstudio7591
趣味 筋トレ(ボディコンテスト優勝経験あり)
資格 主任ケアマネ・社会福祉士・防災士・防災防火管理責任者・鍼灸師・食品衛生責任者 
日本福祉大学卒業
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